皆それぞれ人生において転機がありますが、高校時代に僕の大きな転機がありました。
中学校までの義務教育と違って高校時代からは、厳しい教育者であった親も随分と僕の自主性を許してくれました。
反抗期も手伝って、学校もよくサボタージュしたものです。
何とか最低基準の出席日数は確保して卒業はしましたがとにかく学校の勉強はしなかったですから成績は悪いものでした。
よくもまあ親が寛大だったと改めて感心したりもします。
それでもクラスから選ばれて生徒会の書記を務めたり、好きな吹奏楽でラッパ(トロンボーン)を吹いてパレードや野球の応援には参加していました。
また定期的に寝袋を背負ってヒッチハイクの旅に出ていました。

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そんな高校時代、当時学習研究社から毎月発刊されていた「高3コース」という受験生向けの雑誌に決まって投稿していました。
なんでも詩人の寺山修司さんが詩部門の選者で、憧れの寺山修司さんに自分の作品を診てもらう事が嬉しかった記憶があります。
ところが詩はなかなか入選せず、決まって入選していたのは川柳部門でした。
ちなみにその折の僕の川柳コーナーへの投稿ネームが「加藤笑月」と名乗っていました。
投稿の常連さん達の誌上座談会に誘われたこともあります。
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毎年恒例の「サラリーマン川柳」が今年も発表されました。
ちなみに川柳の起源は日本の伝統的な短歌にたどり着きます。
皆さんご存じでしょうが、川柳も俳句も5・7・5のリズムで詠む口語の定型詩です。
ところが俳句には季語がありますが、川柳には季語を用いる必要性はありません。
そして俳句は自然に関する内容が多く情景描写などを表現するものです。
一方川柳は人間・及び人間社会に関する内容を表現するものと言えます。

今年の「サラリーマン川柳」の入賞作はというと・・・
第1位 「AIの使い方聞くAIに」
第2位 「久しぶり 笑顔は出るが 名前出ず」
第3位 「セルフレジ 母に店員 二人つく」
第4位 「妻描く 老後プランに オレ不在」
第5位 「何食べたい? いった料理は 出てこない」
…といった感じです。
ついつい「なるほどぉ」と納得の川柳群です。

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毎年思いますが実に巧妙にタイムリーな話材を表現しますね。(感心します)
確か今年で38回目になるのではと記憶していますが、かつての第1位作品を並べてみると当時の時代背景がくっきりと浮かび上がってきます。
・31回 「スポーツジム 車で行って チャリをこぐ」
・26回 「いい夫婦 今じゃどうでも いい夫婦」
・21回 「空気読め それより部下の 気持ち読め!!」
・15回 「デジカメの エサは何だと 孫に聞く」
・11回 「我が家では 子供ポケモン パパのけもん」
・6回 「いい家内 10年たったら おっ家内」

・・・なるほどといった内容がいっぱいですね。

川柳には3つの要素があります。
1、うがち
物事を正面からでなく、斜めやうしろ、様々な角度から見るという事。
2、軽み
少ない言葉の中に庶民性や通俗性を含ませること
3、おかしみ
日常の中から醸し出された意図しない笑いや滑稽さ

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個人的には俳句ではなく川柳と相性がよさそうです。
また現在のコンサルタントの仕事にも川柳が通じるものがあるように感じています。
江戸時代にも同じような時代へのメッセージが存在したように思えてなりません。
時代を透徹した確かな「眼」で見つめながら、足をしっかりと「地」に着けて歩いていきたいものです。