「うちの若いもんの中で、誰が頑張っておったかね?」
  飛騨地方の方言でお客様に聞き出しするお尋ね、ある『うなぎ屋さん』の顧客満足度調査のアンケートである。そこには、ここで働く店員の似顔絵が書いてあり、その横に店員の名前が記してある。なるほど店内を見渡せば誰が誰なのか想像がつく。
  このうなぎ屋さん、お店をオープンさせて3年が過ぎ今や人気のお店となっている。確かオープン時のアンケートには「誰が頑張っておったかね・・・?頑張った人を店長にするから教えてくださらんかね?」という内容が記してあった。顧客に店長を決めてもらう発想がユニークだった。そしてSさんが店長に選ばれた。いつもニコニコ笑顔の腰の低い素敵な人である。
  このお店、広告・宣伝の類は全くやらない。地道にこの地で営業し地元にゆっくり、だがしっかりと根付いてきた。店の前には常時店員がいて行列が出来るのとは関係なくお客様に「こんにちは」と声を掛ける。いわゆる客引きとは違う気持ちのいい接客態度である。
  店の作りもユニークだ。「美味と巧みの技と真心つくしの一時を」とうたわれた5つ折のパンフレットはマイナスイオンを発生するインクを使い、爽やかな檜の香が鼻をくすぐる。2百年前の木を使っての蔵のイメージ、段差をなくした土間、備長炭の最高級である姥目樫で起こした火、活性水素水を使った料理、三河一色産の青うなぎ・・・そしてまた店員一人ひとりの心づくしが美味しさを倍増させる。そう、何よりも頑張っている店員の活き活きした姿がこの店に来てよかったと思わせる。
  「ありがとうさん。くつろいでもらえたかの?わしはお客さんに喜んでもらえる事が一番嬉しいんじゃ」民家風の店のどこからか田舎のおばあちゃんの声が聞こえてくる。