毎年日本の野球界に貢献したとして「野球殿堂」入りする人がいる。今年は阪急で活躍した故梶本隆夫氏と「初代五輪監督」(ロサンゼルス)で日本を金メダルに導いた松永怜一氏が選ばれた。松永氏はプロ野球経験者ではないが、福岡県出身、法政大学で内野手として活躍、後母校の監督に就任、6度のチーム優勝を成し、山本浩二や田淵幸一などを育てた。 毎日2~3時間にわたるミーティングを開き選手はそのつど足がしびれ立ち上がれなかったと言う。また住友金属で社会人野球2度の日本一を達成、その後オリンピック代表監督となった。「鬼監督」としてその名をとどろかせたが、野球に対して注力した情熱監督は「指導者の中の指導者」とも言われた。
 最近「鬼」が少なくなった。嫌われ役を買って出るというか、そういった上司も減ってきたように思う。ダメになる会社の条件として、妙に優しい上司が出世する会社が上げられる。厳しさが若い社員に受け入れられないのか。厳しさが原因で社員が辞めてしまうのか。そんなことはない。業績のいい会社には厳しさもある。人は遣り甲斐があれば会社を辞めたりはしない。 厳しさの中に愛情があれば必ず人はついてくる。厳しさと優しさは同居するものに違いない。コンサルをしている関東の会社で社員が辞めなくなった。厳しい上司がいる会社である。がその上司は厳しいだけではない。ひときわ部下を包み込む優しさも持っている。その上司の「鬼」の目に涙が光るのをかいま見た事もある。愛情に支えられた厳しい「鬼」である上司が存在する会社には、やる気ある会社の将来を背負うモチベーションの高い社員が育つに違いない。