初めてのマネージャーとなった時の事。喜びと共に責任の重さが全身にのしかかって来た。転勤先で初めて見るこれから部下となる社員の顔。期待と不安がよぎる。 先ずは気軽なコミュニケーション、社員全員との握手からはじめた。「よろしく」「お互い頑張ろう」と声を掛けながら顔を見つめ名前を覚えていく。こうして営業マンを指導する立場の自分がスタートした。
  この前の10年間、僕は展示場の店長、プレイングマネージャーとして過ごしていた。が、営業マンとしての自分にマンネリズムを感じていた。幸いにして契約はほとんどが紹介で決まり、時間管理が出来ていて4年前からは定期的にスポーツクラブへ通っていた。だから体力だけは自信があった。そして営業本部の大グループ店で期毎に表彰される成績優秀店として多少とも名前を売っていた。その為厳しい店長という噂、またユニークな発想をする面白い人という噂もあった。さあこれからどうしたら業績アップが出来るのか、どんな施策を考えようか悩んだ。現実として転勤先の事業所の実績は低迷を続けていたからだ。「そうだ、誰よりも仕事をしよう。自分が誰よりも動けばいい。そうすれば皆がついてきてくれるに違いない」そして僕は人一倍仕事量をこなした。
  朝早くから夜遅くまで仕事漬けの日々が続いた。部下の重要顧客との面談報告はその日のうちに聞く。問題点は早期に解決していく。現実的で具体的な指示を出すことに専念した。29名の部下全員とその顧客に関心を持った。毎日皆に進捗状況を聞く電話をした。そして出来るだけ多くの社員の顧客宅にも同行した。結果は自然に積み重なり今までの体質が激変した。リーダーが動けば必ず部下である社員も動くという構図がそこに完成していった。