2007年 02月の記事

February 2007
サッカーJリーグに今年参戦する横浜Cがロッソ熊本とプレシーズンマッチを行い後半ロスタイムに決勝点を挙げ勝利した。ラストプレーとなったコーナーキックに合わせてゴール前の密集を抜け出してヘディングシュートを決めたのは2月26日に40歳の誕生日を迎える三浦和良だった。この1点にスタジアムが大いに沸いたという。その動きは体の切れも良く、運動量は豊富で決してチームメイトに見劣りはしない。日本のサッカー界の草分け的存在が今も熱い闘志をもって活躍している姿は見ていて気持ちいいし我々にも大いに励みになるといって過言ではない。
 一方野球界では巨人軍を退団した桑田真澄がアメリカ大リーグパイレーツとマイナー契約し、キャンプ地のフロリダに入った。清原とともにPL学園で活躍。かつての甲子園のヒーローは38歳になった今も野球への情熱を捨て切っていない。この世界では遅すぎる挑戦だろうが、チャレンジする喜びを感じているようにもみえる。「いいことも悪いことも嫌なこともあるだろうけどそんなことは最初からわかっている。そこから何かを学んでいく」と語る彼の表情は人生を明らかに楽しんでいるように映る。
 社員研修で40歳代、50歳代のベテラン社員の活性化の相談を受ける。労働人口の減少もあり65歳までの定年延長の日も近い。男性の平均寿命は79歳である。「なあに、まだまだこれからだよ」と闘志を前面に進んでいく勇気を捨て去ってはいないだろうか。生きていることは素晴らしいこと、生きていくことは価値あること。目立たなくともコツコツと自分の道を懸命に歩いて行けばきっといいことにも出会えるに違いない。しっかりとした目的を持ち、熱い気持ちだけは消さないで生きていきたい。
感動を味わわせてもらった。1月13日全日本大学ラグビー選手権決勝早稲田大学対関東学院大学である。戦前の大方の予想は曽我部、五郎丸、矢富など強力個性派が揃う早稲田圧倒的有利。6年連続の同じカードでの決勝対決、現在早稲田は学生相手に32連勝中。昨年は日本選手権で格上と見られた社会人チームをも粉砕して学生最強とも言われている。今年も優勝して3連覇といく筋書きだったに違いない。ところが開始早々早稲田のラインアウトでマイボールを奪われる、関東学院の強い当たりに早稲田は負傷者が出る始末。何と先制のトライをしたのは関東学院、その後も追加得点して21対0、早稲田も盛り返して12点を返したものの前半終了。後半も早稲田の反撃は届かず33対26で関東学院が早稲田の連覇を止めて3年ぶり学生王座を奪還、最強軍団が敗れ去った。
 激しい、見ていて熱い内容の濃い試合だった。関東学院の勝因は何か、監督と選手一体となった団結力の勝利といえよう。スポーツ評論家の松尾雄治氏は早稲田の監督が就任1年目だった事に原因があるとみていた。1年目といえ早稲田の中竹監督も素晴らしい監督である。だがそれ以上に関東学院の春口監督の選手をまとめエリート集団を撃破した手腕が大きいに違いなかった。春口廣監督57歳、大きな選手に囲まれた156センチの小さな身体が胴上げで宙に舞った。「スターは要らない」「雑草に花が咲いたね」と感涙しながら答えた指揮官の優勝インタビューに目頭が熱くなった。選手のハートを掴むEQ能力が栄冠を勝ち取った。企業においても社員の心を掴みモチベーションを上げる上司が業績アップという栄冠を掴むに違いない。
毎年日本の野球界に貢献したとして「野球殿堂」入りする人がいる。今年は阪急で活躍した故梶本隆夫氏と「初代五輪監督」(ロサンゼルス)で日本を金メダルに導いた松永怜一氏が選ばれた。松永氏はプロ野球経験者ではないが、福岡県出身、法政大学で内野手として活躍、後母校の監督に就任、6度のチーム優勝を成し、山本浩二や田淵幸一などを育てた。 毎日2~3時間にわたるミーティングを開き選手はそのつど足がしびれ立ち上がれなかったと言う。また住友金属で社会人野球2度の日本一を達成、その後オリンピック代表監督となった。「鬼監督」としてその名をとどろかせたが、野球に対して注力した情熱監督は「指導者の中の指導者」とも言われた。
 最近「鬼」が少なくなった。嫌われ役を買って出るというか、そういった上司も減ってきたように思う。ダメになる会社の条件として、妙に優しい上司が出世する会社が上げられる。厳しさが若い社員に受け入れられないのか。厳しさが原因で社員が辞めてしまうのか。そんなことはない。業績のいい会社には厳しさもある。人は遣り甲斐があれば会社を辞めたりはしない。 厳しさの中に愛情があれば必ず人はついてくる。厳しさと優しさは同居するものに違いない。コンサルをしている関東の会社で社員が辞めなくなった。厳しい上司がいる会社である。がその上司は厳しいだけではない。ひときわ部下を包み込む優しさも持っている。その上司の「鬼」の目に涙が光るのをかいま見た事もある。愛情に支えられた厳しい「鬼」である上司が存在する会社には、やる気ある会社の将来を背負うモチベーションの高い社員が育つに違いない。